「訳あり物件」っていったいどんな「訳」があるの?代表的な法的制限・物理的制限・心理的制限について
メディアでも目にすることの多い「訳あり物件」。実際の不動産市場でも、相場に比べて安く売買されているさまざまな訳あり物件があります。
この記事では、訳あり物件が相場よりも安くなる「訳」を解説します!
「訳あり物件」って?
訳あり物件とは通常の物件に比べて、物件を所有すること、または居住することに「法的制限」「物理的制限」「心理的制限」を受ける物件。その制限の対価を売買代金で相殺することになることが多いため、これが安くなる理由のひとつになります。
法的制限がある「訳あり物件」|都市計画道路内
代表的な例は、「都市計画法」による制限。都市計画法の中にも、都市計画線や市街化調整区域などややこしいワードがたくさんありますが、東京都内で一番該当するのは「都市計画道路」でしょう。
当然ながら計画されている道路上にはすでに家が立ち並んでいることがほとんどで、実際に道路を整備するときには所有者・居住者立ち退きが必要になります。
ただし、仮に事業決定された場合でも事業主体である都や区が、立ち退きが必要な土地・建物に対して相場かそれ以上の補償金を支払ってくれるのが一般的。住み慣れた場所を離れる必要はありますが、金銭的な負担はないといえるでしょう。
都市計画道路とは?
都市計画道路とは、良好な市街地環境を整備する都市計画と一体となって整備される道路であり、現在存在しない道路を公益のために新しく作る事業です。
実は東京都内にはたくさんの都市計画道路が存在しており、計画は決定しているものの、事業決定を迎えないまま50年近くを迎えている計画線も多くあります。
ポイント1|鉄筋コンクリートや地下室などの建築はNG
計画線内は立ち退きをした後に、鉄筋コンクリートや地下など行政が解体するのに苦労する建物の建築は認められていません。そういった建物を建てたい場合には、都市計画道路内の物件は選ぶと大きな失敗に。
ポイント2|訳あり物件でも価格が安くない場合もある
道路が事業化する可能性が低い「優先整備路線」に該当しない場合は、実質的な制限は少なく、訳あり物件でも相場に対して5%程度しか安くなりません。
法的制限がある「訳あり物件」|不適合接道=再建築不可
建築基準法では「建築物の敷地は、道路に2メートル以上接しなければならない」という、建物を建築するために接道義務の原則(建築基準法第43条1項)を定めています。
この条件を満たしていないような物件は原則として、今ある建物がなくなると新しく再建築ができない「再建築不可」と呼ばれるもので、価格は相場の半値か、場合によっては7割引の価格で取引されることも。
ポイント1|再建築不可は資産価値が下がる
周りの敷地に空地がある場合など、建築審査会の同意を得て建築可能になる場合もありますが、このような救済が受けられない場合は生涯建替えができない土地となり、大きく資産価値を下げることになります。
また、担保価値がないということで、都市銀行などでも住宅ローンを組むことができません。
ポイント2|周辺環境の変更で価値が上がることも?!
再建築不可の物件は、都市計画道路のような集団的な規定とは違い、該当物件のみが関わる単体の規定です。
そのため、例えば物件を半値で購入した後に隣地所有者と交渉して、接道間口2mが確保できるように隣地を買い取ることができれば、一気に価値は倍になるチャンスも!
しかし、ギャンブル性はすごく高いといえます。
物理的制限のある「訳あり物件」|浸水被害
次の訳あり物件は、物理的制限です。
居住することや建築することに一定のリスクがあり、その対価として相場よりも多少安く買うことができる物件で、代表的なものは浸水リスクのあるものです。
平成17年9月に、東京都内で集中豪雨による大規模な浸水被害がありました。浸水面積174ha、床上浸水3,377棟という被害状況でした。この日をきっかけに、東京に一戸建てを持つことの浸水リスクについてかなり敏感になったかもしれません。
自治体ごと発行している浸水予想図(ハザードマップ)上で浸水予想地域や実害地域に該当する物件であれば、5~10%程は安くなる可能性があります。
とはいえ、行政も前述の集中豪雨以降は治水に力を入れていて、杉並区でいえば雨水の浸透式や善福寺川の護岸工事、貯水タンクを造っていて、同雨量でも被害が広がらないような努力をしています。
心理的制限|事故物件・心理的瑕疵物件
心理的制限の中でよく出てくるのは、当該物件の土地上や建物内で殺人事件や火災などの事故が生じた物件で、「心理的瑕疵(しんりてきかし)物件」とも呼ばれます。
この事故物件には法的制限や物理的制限などなく、ただあるのは「少し怖いかも」という概念的・観念的なもので、価値観には相当な個人差があります。気にする人はどんな制限よりも嫌でしょうし、気にしない人はこんなことでこんなに安く買えるの?ラッキー!と思うかもしれませんね。
相場は事件や事故の内容・規模により大きく異なりますが、場合によっては10~20%ほど下がることも。
ほかにもこんなにある「訳あり物件」
上記以外にもさまざまな法的制限・物理的制限のある、訳あり物件の一例です。
法的制限がある「訳あり物件」
- 防火地域:通常の木造住宅だと、2階建かつ100平方メートル未満しか建てられない
- 風致地区:各境界線からの後退距離制限があり、建物が大きく建てられない
物理的制限がある「訳あり物件」
- 隣地と高低差がある:擁壁(ようへき)工事に多大なコストがかかる
- 私道所有者の同意が得られない:車両の侵入や道路の掘削(くっさく)に制限がある
- 隣地との越境がある:建築物や有効宅地面積に影響する
- 隣地がゴミ屋敷:景観・眺望に劣り、臭気などが生じる
「訳あり」を隠して、物件の契約は絶対にありません!
弊社殖産ベストを含む不動産会社は、宅地建物取引業法に基づき営業活動を認められていて、その上で「重要事項の説明義務(第35条)」と「不告知・不実告知の禁止(第47条)」を義務付けられています。
そのため、不動産会社が訳あり物件の「訳」を隠して契約する事は絶対的に禁止されており、悪意であれ善意であれ、これに違反した場合は行政処分や損害賠償の責任を追うこともあります。
訳あり物件の「訳」は、不動産を購入される人にさまざまな制限を与えるものです。訳あり物件を検討するときは、その制限をしっかりと把握して判断するようにしましょう。
しかし、その制限がその人にとって制限にならないのであれば、それはただの「お買い得物件」に変身するのかもしれませんね。
この記事を書いた不動産のプロ
- 殖産ベスト株式会社
- 古川 秋治
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