
吉祥寺の絵本専門古書店「MAIN TENT」へようこそ!扉を開くと広がるサーカスと物語の世界
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吉祥寺の路地裏にある絵本専門の古書店「MAIN TENT」。サーカス小屋を思わせる店内には、国内外の絵本や児童書がずらりと並び、大人も子どもも思わず夢中に。
店主の冨樫チトさんがつくる独特の世界観は、本だけでなくインテリアや小物にも散りばめられています。
「MAIN TENT」は絵本と児童書専門の古書店
吉祥寺駅から徒歩8分、「東急百貨店 吉祥寺店」の裏エリアにある「MAIN TENT」は、絵本と児童書専門の古書店です。
軒先はにぎやかで、お店の前を通るとつい二度見してしまう人も多いはず。ほんのり薄暗い店内の奥には、どこか怪しげでワクワクするような雰囲気が漂っています。
店内はサーカスのような世界観で、赤と白のストライプのカーテンがまるでサーカス小屋のテントのよう。「MAIN TENT」という店名は、サーカスの中心にある大きなテントを意味するだけでなく、“entertainment”のアナグラムでもあります。
懐かしい絵本や海外のアンティークも♪

「MAIN TENT」では、キャラクターものからアンティークな絵本まで幅広く取り扱っています。子どものころに読んだ名作や、当時は手に取らなかった作品も、大人になって読み返すと新たな発見があるかもしれません。
本は日々入れ替わるため、訪れるたびに新しい出会いが楽しめるのも魅力です。
多才なクリエーターでもある店主の冨樫チトさん
店主の冨樫チトさんは、絵本屋の店主だけでなく、ダンサー、振付師、舞台演出家、壁画やイラストの制作など、多方面で活躍するクリエイター。そんな唯一無二の世界観を求めて、遠方から訪れるお客さんも多く、韓国のツアーコースに組み込まれることもあるそうです。
「MAIN TENT」が生み出す遊び心とリアリティのある世界観
「サーカスは、日常に突如現れる非日常。美しさだけでなく、醜さや不気味さもある。すべてが善ではないところが魅力だと思います。その雰囲気を感じてもらえたら」
そう語る冨樫さん。
店内にはリアルな動物の人形や、真夜中に動き出しそうな置物が点在し、一つひとつにテーマが感じられます。
店内の仕掛けやテーマを探すのも楽しみ方のひとつ


レジカウンターにも遊び心があり、小さな子どもが「これください♪」と言いやすいように特別な差し入れ口が設けられています。
また、秘密の場所として冨樫さんが案内してくれたのは、アーミーのフィギュアとねずみのオブジェが隠された空間。
見つけた瞬間に一瞬ヒヤッとする、そんな仕掛けも「MAIN TENT」の魅力のひとつです。


取材の日、店内には黄色い表紙の本が並んでいました。
「桜の季節にはピンクになるかもしれないし、翌週にはまったく違うテーマで並んでいるかもしれません」
大人も子どもも心躍る演出が施された空間は、時間を忘れてしまうほど、いつまでも眺めていたくなります。
世界の絵本とかわいい小物が集まる「MAIN TENT」
「MAIN TENT」では買い取りした絵本だけでなく、海外で買い付けた絵本や小物もたくさんあります。
世界の切手やカード、キーホルダーなど手に取りやすいかわいくてユニークなものがいっぱいで宝探し気分!
買い付けでは特に、チェコ、ハンガリー、ポーランドなど東ヨーロッパのアイテムが多いそうです。
「東ヨーロッパの歴史的背景は、絵本の世界観や内容に大きな影響を与えています。侵略や国の消滅といった困難な状況のなかで、自国の文化を守ろうと、多くのアーティストが絵本を通じてメッセージを込めた作品を生み出しました。検閲が厳しい時代でも、子どもの本は比較的自由に創作できる分野だったんです」
こうした歴史を知ると、絵本の魅力がより深く感じられますね。
大人も楽しい読み聞かせ
冨樫さん流おすすめの絵本の選び方は、読み聞かせが楽しいこと。
「この『タコやん』なんて、最高におもしろいですよ」と、ページをめくりながらリズミカルに読んでくれました。
「声に出して楽しい絵本は、よく考えられているなと思います。親御さんが選ぶとき、難しい言葉があっても意味がわからなくても、気にしなくていいんです。子どもは絵で読み取るので、なんとなく伝われば楽しめます。わからない言葉があっても、いつかその言葉や場面に出会った時に『このことか』と気づければいい。絵本は未来への種まきでもあるんじゃないでしょうか」
冨樫チトさんのルーツと「MAIN TENT」
冨樫チトさんの名前は、フランスの作家モーリス・ドリュオンによる童話『みどりのゆび』の主人公チト少年に由来しています。
「名前のおかげで絵本との深い結びつきはありましたが、こんな形で関わるとは思っていませんでした」
お店の場所に吉祥寺を選んだのは、大学時代から住み慣れた街だったから。都会すぎず、雑多な雰囲気が心地よく、長く住み続けているそうです。
兄妹ユニットで描く「よるのとびらをひらく方法」
店内には、「よるのとびらをひらく方法」というユニット名で、冨樫さんと妹さんが描いた原画が飾られています。
作画方法は独特で、描きかけの絵を妹さんの部屋の前に置くと、少し描き足されて戻ってくる。それを繰り返すことで完成するという、信頼がなければ成立しない制作スタイルです。
「昔から好きなことを、卒業せず大人になっているというか、やめ下手なのかもしれません。ダンスも絵も、好きだから続けている。それが積み重なって仕事になったり、作品になったり」
絵本にも卒業はなくていいと、冨樫さん。
「たくさんの文字が読めるようになったら絵本は卒業というご家庭が多いかもしれませんが、文字の多さと内容の深さや濃さは比例しないと思います。もちろん絵の魅力、美しいアートとして手元に置いておきたいというものもありますよね。いつまでも好きでいていいし、好きなものは卒業しなくていいと思っています」
「MAIN TENT」で出会った特別な一冊
絵本も引きつけられるものがたくさんあったのですが、冨樫さんの作品がとても気になって、自伝的な著書とハモニカ横丁の絵のポストカードを購入しました。
『Main Tent流 絵本の選び方』は絵本の選び方についても、なるほど!と参考になることがたくさん書かれていますが、冨樫さんの学生時代やお店をオープンするまでのストーリー、言葉の選び方、絵本を引用した例え話など、一気に読んでしまうほどおもしろかったです。
冨樫チト少年が感動した瞬間や、記憶の描写がとても鮮明に描かれ、どこかで自分の思い出ともリンクする不思議な感覚がありました。
ハモニカ横丁の絵も、見覚えのある風景が不思議な動物たちで埋め尽くされ、ずっと見ていても飽きない、言葉にできない引力があります。
「Main Tent」はみんな子どもになれる場所
サーカスのテントに迷い込んだような感覚のまま、夢中になってページをめくる時間は、懐かしさのある非日常。「MAIN TENT」は、子どもにも大人にも、新しい発見を与えてくれる不思議な空間でした。
無邪気な心で絵本探しを楽しんでみてください。

MAIN TENT(メインテント)
- 営業時間
- 平日/10:30〜17:00
土日祝/10:30〜17:30 - 定休日
- 水曜日
- HPなど
- http://maintent-books.com/
- 電話
- 0422-27-6064
- 住所
- 東京都武蔵野市吉祥寺本町2-7-3 Google Mapで見る
※お店の様子、メニューや価格などは取材当時のものです。最新情報はホームページやSNSでご確認ください。